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こども食堂のおばちゃんのコラム

明治時代の日本のこども その1

 

~イザベラ・バード 「日本紀行」で語られた142年前のこどもたち~

明治11年(1878年)イギリス人女性イザベラ・バード(→Wikipedia)が日本(栃木県日光以北~蝦夷)を数カ月かけて旅をし、各地の民俗を研究。彼女の通ったルートはまだ西欧人に踏破されておらず、未知の日本の庶民文化を記録に綴りました。142年前の事です。

 

その様子を母国の妹や友人に送った書簡をまとめ「日本紀行」として1880年出版されました。日光から北海道までその距離2,240キロ。

「私は日本人に混じって生活し、西欧人との接触による影響を受けていない地域で彼らの暮らしぶりを見た」「住民にとって初めて目にする西洋人の女性で、私以前の旅行者の体験とは異なっている」(日本紀行まえがきより)

と記しています。

 

イザベラは、当時47歳。明治11年というと松本の開智学校が建てられたのが、明治9年ですからその2年後になります。長い鎖国から解き放たれ、西洋に追いつこうと明治政府が躍起になっているころです。しかし、地方の庶民は西洋文化に触れることなく、まだまだ独自の文化の中で生活を営んでいました。

 

この記録を基に、142年前の日本の子どもたちがどんな生活を送っていたのか、その様子と世間は子ども達をどう育んでいたのかをシリーズでお届けしたいと思います。

イザベラは、日本について、

「景観は往々にして雄大でほぼどこも美しい。春と夏を通して植生と緑の豊かさは実に素晴らしく日本列島はエメラルド諸島と充分呼べるくらいである」「日本は花々が大変豊富で特に花の咲く灌木に富んでいる。つつじ、椿、紫陽花、木蓮すべてその最盛期には言葉で言い表せないほどさまざまな彩で目を楽しませ、あやめ、牡丹、桜、梅それぞれ特別な鑑賞の催しがある」「美しさや威容を讃えたい樹木は杉、椿、けやき、銀杏、木蓮、柿が第1級である。嬉しくて眺めたくなるのは見事な竹で、あざやかなに緑の羽毛のような葉が針葉樹の木立背景に集まっているさまは、温帯が熱帯を兼ね備えたかのようである」(序章より)

と見事な表現で言い表しています。当時の日本の自然豊かさが鮮やかに目の前に広がっているような気分になりました。

そんなイザベラが日本を旅しながら庶民と触れ合う中で、イギリスとの比較を通じで感じたことを記しています。今回は子どもたちの礼儀正しさに感動したエピソードです。

「私は日本の子どもたちが大好きです。赤ちゃんの泣き声はまだ一度も耳にしたことがありませんし、うるさい子どもや聞き分けのない子どもは一人も見たことがありません。子どもの孝行心は日本美徳の筆頭で、無条件服従は何世紀も続いてきた習慣なのです。英国の母親たちのやる、脅したりおだてたりして子どもたちにいやいや言う事をきかせる方法はここには無いようです。」(第33信 1878年8月2日 青森県碇ヶ関にて)

また子どもの遊びについて

「子どもたちが遊びの中で自立するよう仕込まれるやり方に感心しています」「家庭教育の一部に様々なゲームのルールを覚えるというのがあり、このルールは絶対で、疑問が起きた場合は、口論でゲームを中断するのではなく、年長の子どもが命令をして事を決着させます。子どもたちは子どもたちだけで遊び、何かあるたびに大人たちの手を煩わせるというようなことがありません。」(第33信より)

当時の学齢児童総数は約520万人、そのうち220万人が就学していたと言われています(文科省 学生百年史 資料編より)。2019年の統計では小学生児童数は637万人(文科省 文部統計要覧より)。一概に比較は出てきませんが、142年間で110万人程増えています。2020年5月現在、日本の人口は1億2,590万人(総務省統計局より)。1878年は約3,600万人(総理府統計局より)で約15%が学齢児童数です。2020年では約5%と大幅に子どもの割合が減少しています。

 

明治時代は、総人口の子どもの占める割合が多い分だけ子どもの世界があり、その中で秩序が保たれ、大人とは一線を画していたと推察されます。現代は子ども達独自の世界が失われ、大人の世界の一部に組み込まれてしまっているような気がしています。

イザベラは、さらに

「私は普段お菓子を持参し、子どもたちにやりますが、ひとりとして先に父親または母親から許しを得ずに受け取る子どもはいません。許しを得ると子どもたちはにっこり笑って深々とお辞儀をし、その場にいた仲間に手渡してからようやく自分の口に運びます。」

と子どもたちの礼儀正しさをやさしい眼差しで見つめています。さらに

「英国でいう子どもの遊び、つまりもがいたり、叩いたり、転がったり、飛んだり、蹴ったり、大声をあげたり、笑ったり、喧嘩したり(!)といった一般にさまざまな衝動に身を任せたりする遊び方をこちらでは一度も見たことがありません」(第33信より)

と驚嘆しています。前述でものべましたが、「英国」という言葉を「現代」と置き換えると正にぴったり嵌るように思います。

ただし、こんなことも綴られています。同年7月に新潟に1週間ほど滞在した時のこと。現地で唯一のイングランド人の母親と3歳の女の子と散歩をしていると、大変な数の野次馬が後をついて来たそうです。

「男も女も共に子どもに対してやさしくて、愛想がよいです。日本人はとにかく子どもが好きですが、道徳観が堕落しているのと嘘をつくことを教えるため、西洋の子どもが日本人と一緒にいるのは良くありません」(第20信 1878年7月9日 新潟にて)

と書き送っています。

 

ここで述べている「道徳観の欠落と嘘をつくことを教える」について、詳細に述べられていないので、何を指してそのような表現になったのか定かでないのが残念です。あるいは、第14信(6月24日、藤原にて)で「男は何も着ていないと言えます」と書いています。イザベラがスケッチした男性はいわゆるふんどし姿です。イギリス女性から見れば、裸同然で道徳観が無いと見えたのかもしれません。

 

この日本紀行は1878年12月第59信で終了しています。イザベラの子どもへの優しい眼差しと明治時代の日本人の子どもへの眼差し、どちらも慈愛に満ちていると言っても過言ではなさそうです。

 

142年前の子どもたちを取り巻く環境が、良くも悪くも徐々に西欧化され現代に繋がっています。次回以降も、様々なエピソードを拾いながら明治の子どもたちを見つめてみたいと思います。

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