まいぷれ長野の少し役立つコラム
miko / PIXTA(ピクスタ)
今、世界中に広がっている新型コロナウイルス。3月12日WHOはパンデミックと発表しました。国内でも、3月19日現在で950人の感染者数が報告されています。国内感染のうち死亡された方が33名。いつがピークになるのか先が見えない状況です。ただ世界的にみると、今のところ日本の感染状況は爆発的ではないと言えそうです。
しかしウイルスという見えない敵と戦うことは、かなりのストレスと疑心暗鬼にならざるを得ません。専門家の方は「正しく恐れろ!」と言っていますが、何が正しくて何が間違いなのか刻々と状況が変化していく中で、我々庶民には判断がつかない状況です。
去る3月11日は、東日本大震災の発生から9年目の日でした。約2万人の方が亡くなられ、行方不明になりました。この9年間、全国各地で地震、台風、水害と様々な大災害が起こっています。発生当初はニュースで毎日のように報道されますが、しばらくすると徐々に減少し、地元でない限り、いつの間にか記憶の片隅に追いやられてしまいます。
先日、冨永良喜著「大災害と子どもの心」を読みました。これは阪神淡路大震災後および東日本大震災で行われた子どもの心のケアに基づいて書かれた冊子です。阪神淡路大震災は25年前の1月17日に発生しました。6,434人の命が奪われた大災害でした。
大災害で心身共に大きな打撃を受けた子どもたち。大災害を経験することで様々な反応がでて来ます。しかし時が経つにつれて徐々に自分で収めていく自己回復力が備わっていると言います。それを「セルフケア」と言い、それらを最大限に引き出す支援が「心のケア」だと言います。
その中から子どもたちのストレスと成長につながる表現活動について、ほんの一部ですが考えてみたいと思います。
子どもたちには、安全・安心が基本です。体が安全であること、人との繋がりがあることです。もし体に普通とは違う症状が出たら、マッサージや体のもみほぐし・体操、肩たたきなどといった誰でもできるリラックス法が有効です。少し元気のある子どもなら、思いっきり走り回るだけでも効果があると思います。
体が安全だと認識できると、次にトラウマ記憶が活性化するそうです。そこで災害時の再体験遊びが出てきます。大人は頭ごなしに叱るのではなく、子どもの気持ちを受け止め、認めることが大事です。甘えや退行が起こることもありますが、これは回復の第1歩と捉え、子どもたちが安心・安全な場所と感じられるように大人は心配りをする必要が生じてきます。
もし、大人たちが子どもの心を理解できず叱ってしまうと、子どもの心は閉ざされてしまいます。それは二次被害に繋がっていきます。子どもは言葉でなかなか表現できないので「ごっこ遊び」で表現すると言われています。ですから「ごっこ遊び」は凍りついた記憶が溶け始めている、良いことだと受け止めるのです。そして子ども自身がコントロールできるようになり、体験に向き合えるようになった時、大人は子どもの話にきちんと耳を傾ければ「この人に話をしてもいいんだ」と心を開き、信頼関係を結ぶことができます。子どもの心が落ちつけば、徐々に防災教育につなげて行くことで次のステップに向かうことが出来るのです。
自分ではどうにもできない大災害にあったとき「あの時こうしていれば…」と自分を責めることが良くあります。これは大人も同じですが「あなたは決して悪くない。自分を責める必要は全くありません」ときっぱり言い切ることがその後の心の回復に欠かせません。むしろこの自責の気持ちを、次に起こるかもしれない災害から命を守るための活動へとエネルギーを転換していくことが何よりの回復の糧となります。
また、子どもたちがこうしたストレスを抱えているとき自分なりに工夫してストレス解消をしていれば、是非褒めてあげてください。子どもにとって、大人に褒めてもらうことは何よりの特効薬なのですから。
長野では、昨年10月台風19号の大規模災害が発生し、地域の子どもたちの生活が一変してしまいました。また今回の新型コロナウイルスは災害ではありませんが、目に見えないだけに子どもたちの心に及ぼす影響は計りしれません。「心のケア」はこうした状況でも必要だと思います。少しでもストレスを抱えるようであれば、まず体のリラックスから始め、今の子どもの気持ちを受け止め、どんなに小さくて些細な言葉でもきちんと耳を傾け、向き合う事が出来れば、心が落ち着いてくるのではないかと思います。
子どもはなかなか自分の気持ちを正しく言葉で表現できません。だからこそ大人たちは、子どもの一挙手一投足に常に心を配り、暖かく見守っていくことが必要だと思います。そしてこの閉塞しつつある状況を子どもたちと一緒に我々大人たちも乗り越えていければ、必ず元の普通の生活に戻って行けると信じています。
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