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こども食堂のおばちゃんのコラム

外国籍児童・生徒の就学顛末記

写真:PIXTA

今年6月、ベトナムから中1女子と小4男子がやってきました。

両親は3年ほど前に仕事で来日、ほっとキッチンの日本語教室に毎回参加していました。本来なら子ども達も2020年6月に来日する予定でした。両親が日本の生活に慣れてから子どもたちを呼び寄せる計画でした。ところが、コロナで外国との往来ができなくなり、やむなく2年半別々に暮らすことになってしまいました。毎日ラインで話をしているという事でしたが、やはり直に会えない事は子ども達にとってどんなに辛く寂しかったことでしょう。

 

今回は、待ちに待った子どもたちの来日から登校までの顛末を反省を込めて報告します。

 

6月、ようやく外国との往来が緩和され、無事日本に子ども達を連れてくることができました。来日して直ぐ両親と共にほっとキッチンにやってきました。まだ子どもたちは日本語が理解できない様子でした。それでも小4の男の子は解らないながらもニコニコ笑顔が見られました。中1の女の子は思春期真っただ中のためか、無表情で眼が淀んでいました。日本語が全く分からないので当然かもしれません。

 

お父さんが週明けの月曜日に登校に向けて長野市学校教育課に相談に行くと話してくれました。そこでほっとキッチンのスタッフが同行する旨を申し出たのですが、遠慮して「ひとりで大丈夫」と言うので、それ以上こちらから何も言いませんでした。お父さんは日常会話に問題は無いので、こちらも大丈夫だろうと高を括っていました。ところがそれが騒動のはじまりでした。お節介承知で無理にでも同行するべきだったと、後々後悔することになりました。これが第1の反省点です。日常会話が出来ても、日本の教育行政については何も知らない素人、そこを私達は見誤っていたのです。

 

次に一家がほっとキッチンにやって来たのは2週間後の6月下旬。てっきり、学校へ通っているとばかり思っていました。ところがまだ学校へは行っていないし、登校の目途もたってないというではありませんか。

 

市との話合いで1ヵ月位先になりそうというのです。何故?の疑問で頭の中はいっぱい。日本の子どもなら1週間くらいで登校出来るはず。このままではひょっとする登校は早くて夏休み明け、下手すると秋頃になりかねない。日本語も話せない、友達もいない子ども達を、何ヵ月も家に閉じ込めておくなんて有り得ない!と憤慨することしきり。

 

よくよく話を聞いてみると、市の担当者に、今のアパートでは狭いので広い家に引っ越したい、これから家を探すので1ヵ月位かかりそうと言ったそうです。それなら引っ越し先が決まってから学校を決めましょう!と両者で合意したとのこと。「日本では1ヵ月以上先に登校し始めるなんて考えられない。子どもは出来るだけ早く学校に行かせるのが親の役目」とお父さんに軽く苦言を呈しました。

 

のんびり構えていては、登校はいつになるか判らないという危惧から、ほっとキッチンに頻繁に顔を出してくださる議員さんに相談。早速、市教委に問い合わせていただきました。その時、1日でも早く子どもたちを登校させてあげたい、という気持ちを伝えました。子どもの力は凄いはず。きっと、あっという間に友達ができ、少しずつ日本語が喋れるようになるはずと確信していました。もちろん意地悪な子もいるでしょう、でも世話好きの子もいるものです。子ども同志の力を信じて、大人はそっと後押しすればいいのです。

 

ようやく市教委も動き始めたのが7月の始め。子ども達が来日して1ヵ月後の事です。市内の小中学校は各4校ずつセンター校があり、外国籍の生徒のための日本語教室を開設。日本語の先生をセンター校に派遣し、子ども達に日本語を教えるという制度があります。小4の弟は、その時住んでいたアパートの学区に、今年ベトナムの子が1年生に入学したそうで、センター校ではありませんでしたが、その小学校がいいだろうという事になりました。そうすると中1のお姉さんが通えるセンター校は自ずと決まり、電車通学することになりました。外国籍の子どもは学区関係なく通える事も今回初めて知りました。両親の通勤も考慮し、ようやく就学する小・中学校が決まったわけです。

 

7月初旬ほっとキッチン開催日に、今回お世話になった県議・市議さんも交え、ベトナム一家4人、ほっとキッチンのスタッフたち合わせて十数名で、これまでの経過と今後の方向性の会議を持ちました。引っ越し先が決まり、お盆休み中に引っ越しすること、7月15日に本人とお父さんが中学校を見学し、学校側と話し合うこと。OKであれば19日に就学の申請をすることが確認されました。お父さんが市に相談に行ってから1ヵ月、ようやく登校の目途が立ちました。

 

残念ながら、7月19日の週には夏休みに入り、初登校は休み明け8月19日以降となってしまいました。来日する前から手続きに時間がかかると分かっていて、もっと早く登校支援を始めていれば、7月初旬に登校できたかも知れません。せめて夏休み前に登校できていれば、夏休み中に友達と遊べていたかも知れません。なにしろ、登校し始めてから1週間後、2人がほっとキッチンに来た時は満面の笑みを浮かべ友達ができて学校はとても楽しい!!と一生懸命の日本語で話してくれました。最初に会った時の無表情と目の淀みが嘘のようです。やはり子どもの潜在能力は凄い!の一言です。

 

ここで、一つ特筆することがあります。それは子ども達が直ぐ学校に慣れることができた大きな理由があります。ほっとキッチンのスタッフで、学習塾を経営している人がいます。彼女が6月、初めて子どもたちがほっとキッチンに来た時「来週の月曜日から勉強を教えるから家においで」と誘ってくれたのです。家が近かったという地の利もありました。しかも無償で。平日4日間、塾の生徒さんが来る前の2時間、算数・数学を中心に教えてくれました。言葉が通じないので翻訳ソフトを使って根気よく教えてくれました。子どもたちは「先生大好き!」となつき、信頼関係ができあがりました。

 

また学校へ提出する書類等も、彼女が書き方のアドバイスをしました。これが、子ども達が日本を大好きになる第1歩だったと思います。「両親が生活を掛けて子ども達に日本の教育を受けさせたいと一家でやって来たのだから、私たちに出来ることをしたいと思う」と語ってくれました。子どもたちが学校に通えるようになるまで、平日ほぼ毎日この塾に通うことで、日本という国に少しずつ慣れることができたのだと思います。だからすんなり学校にとけ込めたのでしょう。彼女の実行力にただただ頭が下がります。多分他の誰にも真似はできなかったでしょう。他のスタッフも刺激を受け各々子ども達のために出来ることを模索し始めています。このようなスタッフがいる「ほっとキッチン」を誇りに思います。

 

子どもたちは、とりあえず今は学校に慣れ友達もできて楽しく通っていますが、これから小さな文化のすれ違いが生じてくるかも。その時、お節介スタッフがしゃしゃり出て問題解決に一役かう日が来るのは、そう遠くないと覚悟しています。

 

今後、外国籍の子ども達が増えてくることが予想されます。今回の経験を活かし、孤立して悩んでいる親子がいたら、ぜひ力になりたいと密かに目論んでいます。その第1歩として、9月から試験的に「外国籍の児童・生徒のための無料学習塾」を開設しました。第1・3土曜日9時半~11時半、理科と社会を中心に信州大学教育学部の学生さんに講師をお願いしています。まだ手探りですが、子ども達の笑顔を絶やさないためにも続けて行くつもりです。

 

これからも、子ども達の成長記録を随時この場で報告したいと思っていますので、乞うご期待!

 

(参考:令和3年度 長野市立小・中学校における日本語指導の実践と成果について)

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