まいぷれ長野の少し役立つコラム
寒くなって空気が冷たくなると香りもシンシンと刺すように感じるようになります。
善光寺の参道を上りながら、どこからともなく漂ってくるお線香の香りも、少し前までの柔らかく温かみのある香りから、荘厳で品のある墨のような香りに変わってきました。
磨(す)ることで表に出てくる墨の香りは、心を落ち着かせる作用があります。
そのため良い墨は良い芳香をもつと言われ、色艶や書き味に加えて香りも魅力の一つとなっていますが、あの麗しく優雅な香りは実は墨本体の香りではありません。
墨を作る原料となる膠(にかわ)の臭いを消すために用いられている香料なのだそうです。
臭い消しのための香料というとかなり強いもののように思いますが、強いものに強いものを併せても、香り同士が反発してしまうため、逆にほのかな香り(幽香)を使って調整されます。
その代表が龍脳(りゅうのう)ですが、天然香料の入手が難しい昨今は、龍脳にとても良く似た香りの樟木(しょうぼく)や合成香料を使うことが多くなっているそうです。
龍脳は白檀や桂皮、乳香等とともにお香のブレンドには欠かせない原料となっています。
他の原料と合わせることによって自身の特徴が際立つという香りで、ブレンド後は時間の経過に従って柔らかい品のある香りに変化していく不思議ちゃんです。
お香は、龍脳と白檀・乳香・甘松(かんしょう)・丁子(ちょうじ)・山奈(さんな)・桂皮・大茴香(だいういきょう)・かっ香(かっこう)の9種を基本として、さまざまに組み合わせて作られているそうです。
3~5種ほどを組み合わせて、更にその配合も違うとなれば、数万種もの香りが作れることに!ただし、それを嗅ぎ分けられる高性能な鼻が必要となりますが…(笑)
さて、寒い時期の花火大会として全国的にも有名になってきた「えびす講花火大会」も終わり、いよいよ信州に本格的な冬がやってきます。
凍り付くような冬の空気の中では、自律神経の働きにより血管が収縮して鼻の感覚が鈍くなってしまったり、ひどくなると鼻炎になったりします。
マスクなどで保護しながら暖かくして、寒さに弱い鼻を大事にしてあげてください。
ちなみにこの龍脳、アロマテラピーでは「ボルネオール」と呼ばれ、抗菌作用、抗ウィルス作用、抗真菌作用、免疫調整作用、神経強壮作用、駆虫作用などが確認されています。
薬効が非常に強く、中東や中国では古くから万能薬として珍重されていました。
原産地のスマトラ・ボルネオあたりの住民は、この粉を額に塗って頭痛を治していたといいます。
日本でも喉の薬として有名な龍角散の初期の処方に使われていて、龍角散という名前も龍脳の龍からつけられたのだとか。ゴホンといえば「龍脳」、だったんですね。
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