まいぷれ長野の少し役立つコラム
8月に入り学校は夏休み、社会人の皆さんも長期休暇をとって旅行したり、お盆にはお墓参りに行かれる方も多くいらっしゃると思います。
お墓といえば、その存在感からエジプトのピラミッドが思い浮かびますが、古代エジプトの王たちは、埋葬される際にミイラとして保存されたことでも有名です。
人は亡くなると急激に腐敗してしまうのですが、王の復活を信じたエジプトの民は、特別な処置をして亡き王の身体を残しました。
それがミイラと呼ばれる特別な亡骸です。
近代に入って見つかった王の姿は、特別な状態ではありましたが、腐敗することなくその体形を留めていました。
彼らが施した特別な処置とは何だったのでしょう?
彼らはまず脳や内臓(心臓を除く)を全て取り除いて別の器に移し、殺菌処理をして密閉しました。
骨と皮になった身体にたっぷりと防腐剤を塗り込み、幾重にも包帯を巻きつけました。
このとき殺菌剤や防腐剤として使われたのが「乳香」や「没薬(もつやく)」などの精油で身体を腐敗から守るために大変重要な役割を担いました。
精油は植物から得るものなので、量も限られ大変貴重なものでしたが、繁栄を極めた王朝ゆえに大量に手に入れることができ、それを惜しみなく使うことで王の亡骸を残すことができたのです。
この「乳香」や「没薬」は砂漠に育つカンラン科の樹木で、極度の乾燥と異常な高温という過酷な砂漠の気候の中で生きるために蓄えた多大なエネルギーを持っています。
それが強力な防腐作用と殺菌作用なのです。
発掘された当時の乳香や没薬からは、現代の防腐剤・殺菌剤と同じ種類のクレゾールやオイゲノールといった成分が多量に検出されたそうです。
また内臓が納められた器の蓋が開けられた時には、部屋の隅々まで乳香の聖なる香りが広がったといいます。
何千年を経ても香りが衰えていなかったことで、そのエネルギーの計り知れない強さを窺い知ることができます。
乳香は、その香りが精神的な落ち着きや安心をもたらすことから教会のミサの際に焚かれていました。
参加者の中には、その香りや煙を吸い込むことで体調がよくなった人たちもおり、そのことからも殺菌・抗菌作用に優れていたことがわかります。
現在では、乳香はフランキンセンス、没薬はミルラと言ったほうが馴染みが深く、両方ともアンチエイジングに効果があるとして、化粧品に多く用いられています。
残念ながらどれだけ使っても「ミイラ」にはなれませんので、あらかじめご了承ください。。
この記事に関するキーワード