まいぷれ長野の少し役立つコラム
画像:スー/イラストAC
7月から、SBC放送で「♯家族募集します」というドラマが始まりました。SNSへの「家族募集します」の投稿から始まり、4組の親子の共同生活が始まるというあらすじで、それぞれ個性的な大人の事情に子どもたちも巻き込まれ、徐々に互いの絆を深めていく物語です。このドラマを見て、ふと2年前に北信こども食堂ネットワークで上映会を開催した映画「沈没家族」を思い出しました。(2019年11月、このコラム欄で報告 →ドキュメンタリー映画「沈没家族」上映会)
「沈没家族」はドキュメンタリー映画で、当事者であり監督の加納土氏にも来県していただきトークショーを行いました。ここで映画の概要を少しばかり。1990年代シングルマザーの加納穂子さん(監督のお母さん)が1歳になった息子の加納土氏の子育てを、いろいろな人と育てたら子どもも大人も楽しいのでは?という発想で、“保育人募集”のチラシを作成、広く配布し保育人を募集しました。そして1軒家を借りて皆で共同生活・保育を始めました。保育された加納氏が、大人になって自分の育った環境を確認するべく、当時の共同生活した人たちを訪ね歩き、ドキュメンタリー映画にまとめた実話です。ドラマではSNSで発信ですが、当時はチラシを作成・配布して広く呼びかけたそうです。時代を感じますね。
集まってきたのが母子3組と数人の若者。若者たちは特に子どもが好きということではなく、子どもを囲んで赤の他人同士がワイワイガヤガヤと生活をすることに魅力を感じたそうです。
母子3組と若者、そこに何人もの人たちが出入りし(中には保育が目的ではない人もいたようですが)、3人の子どもたちの保育を行うという実験的子育てが始まりました。「連日知らない誰かがお酒を飲みに来る生活はカオスそのもの」と加納監督は当時を振り返りそう表現しています。そしてそこは「共同生活と交流の場」と定義しています。後年一緒に育った2歳上の“めぐ”は「親と教師以外の大人にかまってもらえることはとても貴重で、自分の人生に大きな意味がある」と映画の中で語っていました。またもう一人の子ども“ゆっぴ”は(映画には登場していません)「沈没家族で育って、変な人がたくさんいて、まともな家庭で育っていたら知らなかったと思う。視野が広がって、ああこんな人たちもいるんだな~と思って、それっていいことだと思う」と述べています。
また筆者がなるほどと思った場面があります。「選択の余地がありすぎるとかえって子どもは辛いとおもう。また叱らないということも一種の虐待。叱ってくれる人がいないというのは不幸。悪いことしたときは、叱られて反省して、立ち直るプロセスが子どもには必要」。この意見は賛否両論があると思いますが、根っこにこうした考えが保育人たちにあったようです。
テレビドラマの「#家族募集します」の設定は現代で、むしろ大人の事情がメインテーマとなっています。赤の他人同士がひょんなきっかけで同居を始め、さまざまな人間模様を織りなしています。血縁関係のある者だけの家族ではなく、他人同士でも心がつながれば家族に成れる、これは30年経っても変わらないテーマと言えそう。因みに映画「沈没家族」の命名は、当時こうした家族の在り方がマスコミに取り上げられ話題になった時、ある政治家が「男女共同参画が進むと日本が沈没する」と発言し、それを聞いた母親の穂子さんが「それなら私たちは沈没家族だ!」と言ってこの名前を付けたそうです。
現在、コロナ禍でさまざまな社会の制約が課され、新しい家族の在り方、社会がどの方向へ向かうのかが問われ始めています。貧困の格差も益々拡がり始めています。だからこそ、「互助」について一人ひとりがその理解を深め、何ができるか考えていく必要があると思います。子ども中心にした互助の精神が深まれば、健やかに成長し、次世代にも引き継がれていくのではないでしょうか?
「互助」について
「互助」とは相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点があるが、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なもの~厚労省・地域包括ケア研究会報告書より
ドラマと映画、どちらも似たような設定になっていますが、「沈没家族」はドキュメンタリーで、子どもの目線で描かれています。「#家族募集します」はホームドラマのエッセンスによって展開し大人の目線で描かれています。
まだ「#家族募集します」のドラマは前半が終ったところですが、後半どのような展開になるのか注目してみたいと思います。大人の目線と子どもの目線。両方を思い浮かべながらこのドラマを観ると、ちょっと違った感動が味わえるかもしれません。子どものセリフは大人が作ったものではなく、子ども自身日常の言葉で語ってもらえるとより一層面白味が出てくる気がします。いかがでしょうか?
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