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こども食堂のおばちゃんのコラム

最近の子どもの生活ってどうなんだろう?

~令和3年 子どもの生活状況調査の分析~内閣府政策統括官の報告書から~

写真:PIXTA

令和3年2月~3月かけて内閣府で【子供の生活状況調査】が行われました。これは子供の貧困対策を進めるにあたって、基礎資料を得ることが目的として行われ、令和3年12月に公表されました。今回はその報告書を基に子どもの問題を考えてみたいと思います。

 

調査対象は全国の中学2年生と保護者です。抽出された5,000件にうち2,715組が回答、回答率54.3%でした。抽出は住民基本台帳から層化二段無作為抽出法によるもので、平たく言えば全国を地域と人口別に分け、調査地点を200とし1地点25組計5,000組としてランダムに対象者を抽出、調査を行ったものです。

 

質問項目の中から、特に子どもの生活状況~生活・行動・学習・課題等いわゆる貧困の連鎖のリスクと影響について見て行きます。

 

まず、大雑把ですが相対的貧困とそうでない世帯に分けます。2018年の調査で、貧困線は所得が127万円以下。相対的貧困率は15.4%です。こどもの貧困率は13.5%で、その中でも子どもがいる世帯でひとり親家庭の貧困率は、48.1%と大変高い数字です。30年前の1988年では相対的貧困率が13.2%、子どもの貧困率が12.9%、ひとり親家庭の貧困率が51.4%ですから、30年経っても大きくは変わっていません(厚労省 2019年国民生活基礎調査より)。

 

今回は、貧困率が高いとされるひとり親家庭に焦点を当てアンケートの数値を検証します。

 

まず、学習について。設問で「学校の授業以外で勉強しない」の回答は、全体で4.9%。ひとり親家庭で10.7%と倍以上でした。また「学校がある日に授業以外の勉強を全くしない」は全体で5.3%。ひとり親家庭で11%。こちらも倍以上でした。もう一つ「クラスの中の成績がやや下の方または下の方」は全体で33%。ひとり親家庭では50%とこちらも高い数字が出ました。学校の授業について「分からないことが多い、または分からない」全体で11.4%、ひとり親家庭は22.2%とこちらも倍の結果がでました。「大学またはそれ以上進学したい」は全体で49.7%、ひとり親家庭では34.7%でした。これまでひとり親家庭の貧困について様々な場面で取り上げられてきましたが、今回子どもたちの意識について初めて数値が示されました。学習面で意欲の差が出ており、自己肯定感の低さに結びつくのでは?と危惧されます。これは貧困の連鎖に結び付きかねません。

 

次に「困っていることや悩み事について相談できる人の有無」について、全体では8.9%が「誰にも相談できない、誰にも相談しない」と答えたのに対し、ひとり親家庭では15.4%と約1.7倍になりました。

 

また、逆境体験8項目の設問もありました。

1.一緒に住んでいる大人から悪口を言われる、けなされる、恥をかかされる、身体を傷つけられるような振る舞いをされたことがある 

2.一緒に住んでいる大人から押される、叩かれる、物を投げつけられる、また怪我をするほど強く殴られたことがある

3.家族の誰からも愛されていない、大切にされていない、支えて貰えていないと感じることがある 

4.必要な食事や衣服を与えられなかったり、自分を守ってくれる人が誰もいないと感じることがある 

5.両親が別居または離婚したことが1度でもある 

6.一緒に住んでいる家族が、誰かに押されたり、掴まれたり、蹴られたことがよくある、または繰り返し殴られたり、刃物で一度でも脅されたことがある 

7.一緒に住んでいる人に、お酒を飲んだり麻薬などで自身の生活や人間関係を損なうような振る舞いをした人がいる 

8.一緒に住んでいる人に、うつ病やその他の心の病気の人、または自殺しようとした人がいる

この設問はとても厳しい内容を含んでいます。もしこのような状況下に置かれているとすれば、心を病んでしまうのではないかと心配です。この設問で0個と回答したのは二人親世帯で85.6%に対し、ひとり親世帯では24.7%でした。1~2個当てはまるの回答は、二人親世帯で12.2%でしたが、ひとり親世帯では68.8%でした。3個以上当てはまるは、二人親世帯で2.3%、ひとり親世帯では6.5%と3倍近い数字になりました。ひとり親家庭の3/4の子どもが何らかの逆境体験を経験していることになります。ひとり親世帯で逆境体験をしている数値が明らかに高いことが立証されました。この設問で3個以上と回答した子どもたち、中学2年生という思春期で最も多感な時期である子どもの将来に、黒い影を落とすのではないかと憂慮されます。

 

次に、子どもたちが「支援制度や居場所を利用したことがあるか」との問いに、あると回答した割合が4.1%でしたが、「あれば利用したい」と答えた子が37.7%。子どもたちの居場所~逃げ場所あるいは一時でも安心できる場所~の必要性と周知について深堀していく必要がありそうです。何しろ、支援制度や居場所の利用後の変化について「生活のなかで楽しみが増えた」「ほっとできる時間が増えた」特にひとり親家庭の子は「気軽に話せる大人が増えた」と回答したのですから。

 

ほっとキッチンではコロナ以前の2年間、毎月中学校4校、高校1校に調理・会食と無料学習塾開催のチラシを生徒数の約2,500枚印刷し配布してもらうよう学校にお願いしてきました。しかし、そのチラシを見て実際参加したいと連絡して来たのはほんの数名でした。この差は何処から来るのでしょう?

 

筆者はこう考えます。つまりチラシを作成し配布しただけでは子どもたちの気持ちには寄り添えないのではないか。現在ほっとキッチンに参加している中高生・若者はほとんどが知人の紹介で参加するようになりました。人と人との信頼関係が縁を繋いでくれました。これは数値化することはできません。悩んでいる子たちを見つけて、どうやって繋がり、信頼してもらえるかが、今後の大きな課題です。

 

この報告書の最後に、経済的な問題に止まらず、貧困がもたらすのは文化資本(文化活動)人的資本(学校教育や健康)、社会関係資本(人との関わり)の欠如があると指摘しています。これらの欠如は貧困の連鎖を生じてしまいます。では、どのような対策が必要でしょうか?

 

生活を安定させることが真っ先に求められますが、それと同時に文化資本、人的資本、社会的資本の重要性を認識しなければなりません。経済資本は施策によってある程度改善できますが、他の3つの資本、特に社会的資本~人との関わり~は施策だけに頼って改善されるものではありません。孤立しがちな子ども達だからこそ、民間の活力が求められるのではないでしょうか。この部分で、私たちも何らかの形でこども達が明るい未来を迎えるために関わることが出来るのではないかと考えています。実際参加している中高生・若者は当初俯き加減でしたが、徐々に顔をあげ、いつの間にか少しづつ言葉を交わし始め、友達になっています。若い力には、大人には分からない何か魔法のようなものが潜んでいるようです。こうした「和・輪・羽」が自信に繋がりいつかきっと空高く羽ばたいてくれると信じています。そうした意味も含めて子ども・中高生・若者の居場所を民間で作り、子ども達をまあ~るく包み込んでいけるように、今後も息の長い活動を続けて行く所存です。そしてこうした居場所がもっと増えて行くことを望んで止みません。

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長野市で中高生・若者(10代)を対象としたこども食堂を運営しています。

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